【献杯 3.11】被災地と被災者に寄り添う酒。ゴールデンスランバ 福島県浪江町/山形県長井市 鈴木酒造店長井蔵

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福島県浪江町の酒蔵「鈴木酒造店」から「鈴木酒造店長井蔵」へ

「日本一海に近い酒蔵」は一瞬にして流された

鈴木酒造店は江戸時代より福島県浪江町の港町で酒造りを行なってきた歴史ある酒蔵であり、「磐城壽”いわきことぶき”」という縁起の良い名前が付けられた酒を醸していた。豊漁を祈る地元の漁師たちに親しまれる酒であった。

2011年3月11日、東日本大震災の津波で全建屋が流失。

数日後に発生した福島第一原子力発電所の事故により、酒蔵一帯が警戒区域に指定され、立入禁止に。
(※現在は解除されている)

これらにより、福島県浪江町で200年近くもの間続けた酒造りを鈴木酒造店は諦めなければならない事態となり、休業を余儀なくされたのだ。

酒造りを諦めかけたその時。独自の酵母が見つかり、再起への決意。

津波によって全て流されていたはずの酒蔵独自の酵母が、福島県内の試験場で見つかった。研究のために預けていたものだった。この酵母があれば、鈴木酒造店の酒を表現することができる。

鈴木酒造店は再起を決意し、2011年10月に後継者不足で廃業を考えていた山形県長井市の酒蔵を受け継ぐことにより、「鈴木酒造店長井蔵」として再出発を果たしたのだ。

福島県浪江町で長年受け継いできた伝統の丁寧な酒造りと、「水と緑と花のまち」と呼ばれる長井市の綺麗な軟水によって良質な酒を醸す鈴木酒造店はふたつの故郷を持っている。

『明日の為に想いを一つに、被災地と被災者に寄り添うこと』

『3.11メモリアル酒 ゴールデンスランバ / Golden Slumber Memorial on 311』

東日本大震災による犠牲者の鎮魂と、残された人たちの明日への活力の一歩となる事ことを願い、東北の皆で想いを分かち合う事ができる酒をとこのお酒は企画された。

未来に向けて、一ミリでも前に踏み出すため「黙祷から献杯に」を念頭に、3月11日の献杯酒として犠牲者の方々の鎮魂、語らいの場、そして希望を与えることができる酒になるであろう。

『3.11メモリアル酒 ゴールデンスランバ / Golden Slumber Memorial on 311』

解禁日:3月11日 ※東北地区取扱店のみの販売※
仕込み:R3BY
スペック:生もと造り純米吟醸生酒
原料米:福島市産「夢の香」100%使用(契約栽培米100%) 
精米歩合:真吟55%
酵母:協会6号 
度数:15度
火入れ:なし(本生)

震災復興の酒 ゴールデンスランバ

ゴールデンスランバという酒が生まれるにあたっての主要人物として、鈴木酒造店長井蔵の鈴木大介氏と山形県で La Jomon という純米酒専門店を営む熊谷太郎氏が挙げられる。

熊谷氏がネーミングを考えていた。関東地方から東北地方にかけての太平洋岸の漁村では「あんば様」という漁業の守護神が信仰されており、鈴木氏・鈴木酒造店のルーツ 浪江町には「安波祭」、熊谷氏のルーツ 気仙沼市には「安波山」があり、共通する言葉「安波」がきっかけとなった。

そして、熊谷氏は思い出の曲「Golden Slumbers」に由来する「ゴールデンスランバ」の名前をひらめいた。歌詞の始まりに “かつてそこには、故郷に続く道があった” とあり、福島という共通項の中で彼らが同じ想いを共有できる内容となった。

※「Golden Slumbers」はザ・ビートルズの12作目のアルバム「Abbey Road」(1969年) に収録されている曲。

Golden Slumbers / The Beatles ※一部抜粋

Once there was a way to get back homeward
Once there was a way to get back home
Sleep pretty darling do not cry
And I will sing a lullaby

日本語訳

かつてそこには、家路となる道があった
かつてそこには、故郷に続く道があった
おやすみ、愛しい人よ、泣かないで
僕が子守唄を歌おう

Written by Paul McCartney

2016年1月、福島で改良開発された「夢の香」という酒米と香り高い表現となる「6号酵母」、山形県長井市の土地と清らかな軟水で醸された酒が誕生した。それこそが「3.11メモリアル酒 ゴールデンスランバ」なのである。

以降、毎年醸造出荷されている。3月11日に解禁されるお酒として東北地方を中心に販売され、現在は日本各地の飲食店で飲むことができるようになっているため、皆さんのお住まいの地域に取り扱い店や飲食店があれば味わってみてはいかがだろうか。

あわせて飲みたい「磐城壽 純米吟醸 甦る2022」

『一滴の水・一粒の米が酒になるように思いやりと心意気の輪は限りなく』

もともと、このお酒は鈴木酒造店が2011年10月に山形市長井市にて酒蔵を受け継ぐ前の「東洋酒造」という酒蔵時代に、長井市が循環型農業と社会の仕組みを目指して、一般家庭ごみを堆肥に換えて農作物や加工品をつくる「レインボープラン認証」を受けた「さわのはな」という幻の酒米を使用して販売していたものである。

福島県内から長井市に避難した方々が農園を運営し、「レインボープラン」を活用した安全安心な農作物を生産していた。鈴木酒造店長井蔵へ「さわのはな」という米を使って酒造りを欲しいという依頼を受けて酒造りを行い、販売に至ったのが「磐城壽 純米吟醸 甦る」なのだ。

このお酒は震災で避難した方々が繋いだお酒。農家さんと鈴木酒造店長井蔵が手がけた、避難者が作り上げた日本酒。

裏張りには、レインボープランとお酒の説明の他、福島県在住の方が県外に避難した人たちに宛てたメッセージと、長井市に避難している方が福島県内の人たちに宛てたメッセージを別に記されているため、このお酒に巡り会った方はぜひラベルにも目を向けてみていただきたい。

『磐城壽 純米吟醸 甦る2022』

スペック:純米吟醸酒火入れ
原料米:さわのはな55%精米
原料米生産者:福幸ファーム
日本酒度:0~+2
酸度:1.4~1.6
アルコール度数15度

福島県浪江町の酒蔵は、想いを紡ぎながら山形県長井市で酒を醸し続けている。
震災を風化させず、また来る明日の為に想いをひとつに。2種類の日本酒と共に献杯を。

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