2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)のターゲットの一つに「2030年までに食品ロスを半減させる」ことが盛り込まれるなど、近年国内外で食品ロス削減への機運は高まるばかり。その点では、もともと「食品保存の知恵」として古くから伝承された日本の発酵食品が注目を浴びるのは必然の流れだ。いわゆる「越後発酵」として特徴的な発酵食文化を有する新潟から、フードロス撲滅への新たなアクションが展開され始めた。
発酵食でフードロスをゼロに。新潟県長岡市の4社が協同プロジェクト始動。
「越後ど発酵」協同プロジェクト
新潟県長岡市に本社を構える4社が、新潟県内で年間9万トン発生するという食品ロスのうち食品製造で発生する約1万トンを削減するために「越後ど発酵」プロジェクトを発足させた。発足日は2021年8月6日(発酵の日)。
4社は長岡市の地酒「柏露」の蔵元・柏露酒造、新潟県で流通する醤油の約7割を醸造する新潟県醤油協業組合、越後長岡味噌醸造元のたちばな、アクアポニックス事業への支援などを行うプラントフォーム(事務局)。いずれも「発酵」に関する知識の蓄積と技術を持つ4社が共同で「越後ど発酵」ブランド商品を開発していく。開発された商品は、新潟県内はもとより、将来的には海外へ流通される日本酒とセットでの販売を行っていきたいとしている。
「4社が共同で商品を開発する強みは、互いが持つ発酵技術の有効活用ができること。自社だけでは今まで開発できなかった商品をスピーディーに開発し、販売することが可能になる。新潟県内で発生する食品ロスを原材料として使用し、4社共同で新たな発酵食品にアップサイクルすることで県内の食品ロス削減に貢献していく」(プレスリリースより抜粋)

今後は、こうした活動目標に共感する県内の食品製造業者や農家などのプロジェクト参加も募り、「越後ど発酵」ブランドを共有し、さらなる商品開発から互いの販売チャンネルを使った販売を展開していくという。
プロジェクト参加企業概要 ○柏露酒造株式会社 代表者: 取締役社長 竹迫 昭人 所在地: 〒940-1131 新潟県長岡市十日町字小島1927番地 創業 : 1751年 ○新潟県醤油協業組合 代表者: 理事長 平石 量作 所在地: 〒940-1131 新潟県長岡市十日町1901番地1 設立 : 1972年12月 ○有限会社たちばな(越後長岡味噌醸造 たちばな本舗) 代表者: 代表取締役社長 南 直樹 所在地: 〒940-1154 新潟県長岡市宮栄3丁目5番18号 設立 : 2004年7月 ○株式会社プラントフォーム(事務局) 代表者: 代表取締役CEO 山本 祐二 所在地: 〒940-1140 新潟県長岡市上前島1-1863 設立 : 2018年7月
「発酵循環」が成立しているコミュニティ
かくして立ち上がったブランドの、商品化第一弾は「越後ど発酵 古志漬けの素」および「越後ど発酵 古志漬け」

柏露酒造の酒粕、たちばなから米糀、醤油醸造協業組合から火入れ前の醤油(生揚げ)が提供され、これをブレンドしたのち、さらに追熟(再発酵)させた古志漬けの素と、そこにレタスを漬け込んだ古志漬け。古志漬けの素は、野菜などを漬け込むことで簡単に古志漬けが作れるほか、お好みの具材のディップソースとしても使える。
発酵が演出する豊潤な旨味に満ちた、美味しい漬物。醤油と酒粕を合わせることで出る複雑味が深みを与えている。日本酒のアテには最高、お茶うけにも気が利いている。

古志とは古くから発酵醸造文化が根付く長岡市はかつて「古志」という地名で呼ばれていた。
人々の暮らしにも発酵食品は深く関わり、酒蔵から大量に出る酒粕は日々の生活に活用されていました。保存のきかない野菜などを酒粕を使った煮物や漬物などにすることで長期間楽しむ、そんな発酵循環の文化が脈々と受け継がれてきたが、生活が多忙を極める現代で酒粕を使った料理は姿を消していく。かくして「産業廃棄物」となった酒粕だが、一方でナチュラルフード愛好者の間では非常に好まれる食材で需要が高く、その意味では昨今のトレンドフードとも言える。
何より「発酵循環」が成立しているコミュニティは、実にサスティナブルだと感じる。「腐敗」の対極にある「発酵」という自然現象を利用する文化は、「食品ロス」を出さないという昔の日本人の知恵に他ならない。
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